山添村様インタビュー後半 「業務改善からの文書管理」

維持管理アカデミー形式での維持管理の取り組みについて、お二人はどのように感じましたか

・井上補佐
正直に言うと当初アカデミー参加者の中には「なぜ自分が担当になったかわからない」「総務課や総合政策課がファイリングのルールを決めてほしい。その通り運用すれば研修式のアカデミーは不要」という声もありました。

ところが後半になるにつれ「うちの所属は、こういうルールで運用したい」という声が出るようになり、さらに他所属の事情も踏まえた、全庁的な視点での改善の声が増えるという、変化が見られました。回を経るごとに「山添村としてどうあるべきか」という会話が増え、全庁的な視点で進めようとする職員が増えていったように思います。

アカデミーの様子 受講中

書庫の状態を全員で確認。他所属の状況も確認し、全庁的な視点での改善の話題へ

・椋本課長
「改善ありき」で進めたのがうまく作用したようにも思っています。そしてこれは、若手だけではなく課長もだと思っています。

自分は普段、課長会議に出ていますが、参加者が他の所属のことを深く考え、意見をだすようになってきたように感じています。例えば、これまでだと「自分の所属は、いつ頃こんな業務をします、よろしくお願いします」という報告が中心の会議でした。もちろん村の共通の大きな課題の際に話し合いなどはありましたよ。でも、村長、副村長、教育長も交えて、全職員に共通する内部改善をテーマにして、話しはじめたこと自体が初です。文書管理は、全所属、全職員が同じことに取り組むので「あれはどうや、これはどうやと」共通の話題で話を積み重ねてこられました。今思えば「アナログ整理に意味あるのか?」という声すらも、共通の業務について考え始める場になったと思います。

「村長に相談してこんな話をしたんです」という言葉も、課長からよくお聞きしました。

・椋本課長
そうですね。あれこれ話を聞いてくれる村長です。若手からもどんどん話しかけてもらいたいタイプの村長なので、そういう意味では話しやすい庁内の雰囲気というのはありますね。

村長他者検索の様子、17秒で取り出し

左、椋本課長 右、井上課長補佐

取り組みから維持管理まで、教職員の方や専門職の方も一緒に作業し工夫もしてくださっていました。

・椋本課長
「全員で作業」をテーマに進めたおかげで教育委員会にいる先生方も一緒に実施してくれました。とてもありがたかったです。外部との人事異動がある教育部門や保健師さんといった、専門職の方の入れ替わりもあります。ただ、特に専門職の方は、後任も専門職の方になってしまって、自己流で綴ってしまうと、周囲がサポートできないので、個人に負担を大きく強いてしまうことも課題でした。でも今は「こういう管理方法です」とご案内できるので引き継ぐ方も引き継がれる方も業務が楽になる。周囲も書類を通じて業務を把握できている。全員の働き方改革にもつながっています。

長期に渡る工事書類が多く、取り扱いが複雑化しやすい、農林建設課様、環境衛生課様も積極的に進めてくださいました。

・椋本課長
土木、契約書、工事、図面と例外管理も多い中「極力庁内共通のルールのもとに管理しよう!」「誰でも30秒検索が達成できる管理にしよう!」と奮闘してくれていた様子でしたね。文具の形跡管理している職員がいたのも農林建設課でした。きちん管理したいという個人の性格もあったのかもしれないけれど、普段から丁寧に確実に仕事している様子とつながっていると思いました。

職員様個人で実践されていた形跡管理

写真番号まで左下に入力。丁寧に作成された事後報告書類の様子

・井上補佐
アカデミー参加の若手職員様も「うちの所属は、導入の時にこういう意見交換があった上でこういうルールになった」等の発言もあり、所属内の共通認識も取れていた印象でした。

・椋本課長
特に農林建設課は、課長がやる気だったんです。この話をしたときに1番にやると言った人。やっぱり前向きに取り組んでくれた所属の方が効果も大きかったようにも思います。

振り返って一番「しんどい」と思われた時期はいつですか

・井上補佐
僕はこの業務に価値を感じない人に理解してもらう説明、調整の部分が苦労でした。今思えば「もう少し強く言えばよかった」という反省もあります。最近は「みんなができていて当然」という空気ができましたが、この空気に変わるまでが大変でしたね。ただ協力してくれる人とは一緒に仕事ができた満足度もありました。

・椋本課長
僕は1年目の途中ですね。当初2年に分けて前半と後半に導入所属を分けて完成するという計画で進んでいたのが「全部署、今年やろう」という話の流れになった時です。作業が進み効果が見えてくるにつれ「成功のためには全所属一気にやるべき」という声が課長会でも強くなってきたのです。ただ全員が「うん」とも言わない笑 そもそも予算も確保していない。あのときは、所属との意見の調整に苦労しました。

「総合政策課内の業務改善が、理想的な形になってきた」というお話の詳細を教えてください

椋本課長
自分の所属の課員ではあるのですが、変化を見ていると、文書管理を通じて、書類の共有から、職員との認識共有の改善について実現できたと思っています。もちろん導入担当課なので当然かもしれませんが、例えば、今日もちょうど課員のN君が「こういうスケジュールでこれをやりましょう」って、自発的にスケジュール調整してくれ、そこにM君やKさんが意見をだし、より効率的な方法を話し合い相談し探しあいながら、進めてくれていました。管理職が何も言わなくても、こんな風に動いてくれる。自分のこの目の前で起こっているこの光景が嬉しくて、本当にこう「じっと」見てしまうんです笑。

総合政策課様、モデル導入実践時

・井上補佐
僕は個別フォルダにタイトルつけるという「ネーミング、要約」というのがどうも苦手で。「もう思いつかへん…!」というときに、当時後輩のHくんに尋ねたら、上手にタイトルつけるんですよね。また先日はMくんが「総合計画業務の新規のこの文書、この配列でみんな分かりやすいでしょうか」と聞いてくれました。そこで「私ならこう考えるかな」と話をする。財政担当のNくんも「今はこうだけど、業務の在り方を考えたときには、こういう組み替えてもいいですか」と聞いてくれる。

ファイル基準表は毎年どんどん変化し、相談しながら作り上げてきた結果、完成度は年々上がっていると思います。もちろん彼らはこれを課長にも相談しているのですが、この雰囲気が作れたのは、文書管理業務に取り組んだ結果だと思っています。改善の土台作りとしてやりたかったこととして、結果がここでも出たと思っています。ここまで来た段階で言えば、実践してよかったと言い切れます。

「重要なのはファイル基準表」ということが、庁内に浸透してこられた印象です

・椋本課長
導入検討当時、課長会で受けた指摘は「個別フォルダに入れ替え、整理整頓することが、費用対効果の視点でみたときに必要なのか?」ということ。正直、僕も思いました笑。だけど、これは見た目だけであって、重要なのはファイル基準表で文書管理。ここを理解してもらう説明が必要でした。

さらに簿冊から外すことで、1枚1枚丁寧にチェックができること、そこで2重管理している書類の廃棄が進むこと、今やっておくことで今後同様の管理をする際のエラーを防ぐことにもなる。これらはモデル実践として自部署が実施済み、先に体感しているからこそ現実的に進めて行けるという確信がありました。今では会計課で全庁分の簿冊購入は全くしておらず、執務室の中で簿冊を見かけることもなくなりました。

それよりも、おっしゃる通り上記作業の後の、紙文書のリスト化を行ったファイル基準表が重要です。これが完成すれば今後どう整理、分類、カテゴリ分けしたらいいかがわかる。それがわからないことが大問題なんです。これがあれば、間違いなく文書管理システム導入時も楽です。もちろんパソコンの共有フォルダの整理でもカテゴリーわけの基礎資料になるので、これを使ってフォルダの整理を進めようとしています。またこの共有フォルダのデータを整理をしっかりしておかないと、デジタル化する時に支障があるとも伝えています。

アナログ整理をせずにシステム導入し、タイトルも分類も整っていないとどんどん増えるばかりで、結局書類もデータも探せない、探すことに時間がかかるという状況は、ファイル基準表があれば避けられる。アナログからやるのが確実だと、やってみて実感しました。

スタートは不明点も多い環境下でしたけど、オフィスミカサさんへの満足度というのは毎年上がっています。限りある委託料の中で、社員さんも頻繁に来ていただいて。総合政策課とのやり取りだけじゃなく、各課へも丁寧に回っていただき、他所属からの質問にも直接、回答やサポートしていただいている回数も相当数あります。それも、熱意のあるやり取りをしていただいていると感じていて。正直「ここまでしていただけるのか」と思うこともありましたし、依頼してよかったと正直にそう思っています。

手前から、総務課、総合政策課、教育委員会

他の自治体から問い合わせが増えている、とお聞きしました

・椋本課長
そうなんです。先日も近隣自治体様の担当者が山添村役場へ、他の業務で来られた時に「きれいですね!」と、窓口の職員が声をかけられたんです。その方曰く「実はうちも執務環境悩んでいて」「外部への移転が迫っているのですが、書類が課題で…」とお話があったそうで。改めてお問い合わせいただき、我々総合政策課から、取り組みの説明を行いました。

昨年は、富山県から舟橋村様も町長と職員様がお越しくださいました。村長との会議で来られた奈良県下の自治体の町長お二人が、関心を持たれて、急遽、見学としてキャビネットの中までご覧になったこともありました。こちらは急だったのでとても驚きましたが笑 注目されているんだなというのは感じます。

富山県舟橋村が視察に来られた時の対応

紙文書管理から実施した、データの整理の状況を実際のフォルダを見てレクチャー

【富山県舟橋村様】文書環境整備の最適化→徹底された執務室の状況の視察(視察先:山添村様)

・井上補佐
奈良県のデジタル担当の方とお話ししたときにも「綺麗ですね」と声をかけられました。「今、紙文書管理改善からデジタル化に向けて取り組んでいるんです」と伝えたら、「アナログからの改善は、絶対された方がいいですよ」と言われました。これから検討する文書管理システム等も、導入に向けてさまざまな不安はあるけれど、きっと大丈夫と思えるところまで準備できたと思っています。

でもまだまだ、やることはたくさんあります。書庫の改善もそうだし、デジタル導入時には運用も含めて、決めないといけないことも山積みで、試行錯誤、改善しながらやっていかないといけない、苦労もすると思っています。ただ、全庁的な根底の部分を見直せたので、進めて行けると思っています。綺麗事じゃなく、汗をかきながら、みんなの協力を得ながら、全体で実施することは、改めて大事だと思いました。

・椋本課長
継続させていくためには、職員がやるべきことをしていくこと、これが何より重要だと思います。

 

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