山添村様インタビュー前半 「業務改善からの文書管理」

 

庁舎移転8年目を迎え、全庁的な文書管理改善を実践された奈良県山添村様。会議などで庁舎を訪問した他の自治体職員から「山添村は凄い」という噂が広がり、関係者が見学に訪れられているそうです。
「本当に取り組んでよかったと、今なら自信をもって言える」「庁内の雰囲気も良い形で変わってきた、前向きな手ごたえを感じる」というのは、本プロジェクト実施を推進してきた、総合政策課椋本課長と、井上課長補佐。今回お二人へ導入のきっかけから、実践時を振り返ってのインタビューをお願いいたしました。

  1. ■背景■
    ・令和4年度時点/文書管理システム、電子決裁システム未導入(令和6~7年度に導入検討)

    ・令和4年度、モデル実施 総合政策課様
     ・野村村長他者検索(30秒取り出し)体験
     ・全職員様対象「職場環境改善、モノ書類管理」研修実施
    ・令和5年度、庁内全所属導入実施
     ・書類量40%削減
     ・全体で105.3fm/ラテラルキャビネット39台分 
     ・4,603行の全部署の行政文書リスト完成
     ・共通分類完成、 所属共通の計画書等を、紙→データで一元管理
    ・令和6年度、維持管理アカデミー
     ・研修全6回 ・文書管理マニュアル作成 ・書庫改善実施
     ・修了者 16名

    アカデミー全6回

山添村様のファイリングスタート(文書管理再構築事業)きっかけについて教えてください

・椋本課長
1つ目は、新しい庁舎の存在と過去からの反省です。庁舎が建て替わったとき、庁舎内の状態は割ときれいでしたが、それは建て替えをきっかけに大量の書類の処分をしたからでした。
「この状態を保たなければならない」と、職員全体が感じていました。

しかし、令和4年度当時、書類が徐々に増えているという現状がありました。実は移転きっかけ以前、現課長世代が役職に就く前にも、大量の書類整理をしたのですが、継続できなかったんです。過去の反省を強く思い起こしました。

山添村様庁舎外観

取組前のキャビネット内の書類の様子

取組前、住民の方が来られるフロアの執務室の様子

2つ目は、ちょうど業務改善をしていくテーマをさがしていた内容と合致したことです。「デジタル導入だけではダメだ。自分たちの考え方も含めて、改善し、変えていかないと、何事もうまくいかない」と考えていたんです。

そんな時に、すでに取り組まれている、奈良県三宅町政策推進課様へお邪魔し、キャビネットの中の書類と管理状態を現地で見たときに「書類の整理は、不要なものの整理。業務の整理、業務見直し、やめるものはやめる。変えるものを変える」と「文書管理からの業務改善」に関して、ステップアップへのイメージがはっきりとつながった。ここがきっかけだったと思います。

・井上補佐
僕は世代的に書類整理の反省というのは知りませんが、若いころから「帰宅時には書類もパソコンもデスクの上に置いて帰らないこと」は当然でした。ルールという前にこれが習慣というか文化だったので、シンプルに「文書管理を行う、庁舎をきれいに保つ」という意識は受け入れやすかったと思います。

以前から、カウンター上にモノはゼロ、ポスター掲示場所は別場所に定められている

廊下や階段等には、一切モノが置かれていない

そして僕もDXや業務改善をテーマに取り組みを探している中で、アナログから整理をしていくというのが、結局一番成果が出るのが早いし間違いないと思いました。

・椋本課長
「整理整頓はあたり前のことで、誇るほどではない」と、今でもそう思っています。ただ平成29年度に新庁舎になってから8年経過し、今の状態を保てていることは、少しは誇ってもいいと思うようになりました。

 

「過去に大量の書類整理を実施した際に失敗した」という反省を踏まえた上で、今回はどのような点が違うと感じていますか

今回、維持に向けての重要なポイントは、オフィスミカサさんの指導のもとで、自分たちでファイル基準表をしっかり作ったこと。これが、以前との大きな違いです。以前は、総務省の事業の一環として作業委託で実施しました。結果、書類の要不要も分類もタイトルも全部人任せ。だから見直しをしていない。せっかく作成した文書の一覧表を、業務の引き継ぎや効率化のために活用できず、結果維持できなかったというのが原因だったと、今ならわかります。今回は、職員自らが実施したことで、業務の見直しや引き継ぎを兼ねたファイル基準表ができているのが本当に大きな違いです。

やっぱり何事もそうですが「自分たち」で「実践すること」が大事なんだと改めて思いました。

文書管理改善業務スタートした後の廃棄量

「文書管理改善を実施していこう」と全庁的にスタートされた際、また取り組みを進められる中での庁内の反応はいかがでしたか

・椋本課長
正直に言うと「こんな取り組みに、本当に効果はあるのか」「忙しい中なぜこんなことをするのか」という声もあり、まとまり切らない状況でした。ただ「ここからスタートしないと、我々の業務改善は次へ進めない、これが今後の業務改善につながる、変わっていかなければならない」と熱く語ることで、理解を得ていきました。

当時の総務課長も、途中から完全にサポート体制で「やるなら徹底してやろう」「全員でやろう」と言ってくれた。ただし「これは委託する業務ではなく、本来普段から職員がやっておくべきこと。できていないことがおかしい」とも言われました。「厳しい意見だな」と思いましたけど、ごもっともですよね。様々な意見がある中でしたが、総務課長のような理解者ももちろんいました。

そして「やってよかった」という声は、取り組みが進むにつれ広まっていった印象です。書類がどんどん減っていく、管理のレベルが上がってくる、進むごとに「これ意味ありますわ」と、言ってくれる声が聞こえてくる。全員で進めたからこそ、課長や補佐にも「ここに、こんな書類がある」という共有の認識できたのもメリットでした。

ほとんどの書類が、キャビネットからなくなった所属も

現在の総合政策課様の執務室、普段の様子

山添村は職員が少ない分、一人の業務の種類が多く属人化しやすいです。なので、どうしても担当者任せになって、何かあると「その書類を探せ」という状況になっていました。でも、書類が目に見えて減り、業務の把握が進み、属人化が解消されていったことが実感できるようになってきた。「共有ができるようになった、担当者不在でも返事ができるようになったのが良かった」と事後アンケートに書いてくれた若手もいて、とても良かったと感じています。

「文書管理改善はあくまで1年目の手段、翌年以降の業務改善につなげる過程としたい」というご希望が、山添村様の特徴でした

・井上補佐
業務改善の過程といっても結果は出さないといけないプレッシャーの中で、一年目はやり切ることを目標に。課長補佐級をリーダーとして導入の展開をしました。一方でどうしても課員まで伝わらない部分もありました。そこで二年目は若手を中心に、維持管理+リーダー育成+改善を全部セットにした維持管理アカデミー(研修形式全6回)を実施し、日々所属の文書管理の運用を行う文書管理主任を中心とした職員に対してアプローチを行いました。

アカデミー研修の様子。第1回、村長の挨拶でスタート

・椋本課長
僕は、第1回目のアカデミーの際、参加者の「文書管理の重要性についての考え」に対する意識の高さを知り驚きました。みんながこんなにいろんな角度から、真剣に山添村のことを考えてくれているんだということが伝わってきました。「後は実行するだけだ」と思うことができました。

・井上補佐
当初は、アカデミー参加者が、所属職員へ伝えていく伝達研修の想定をしていました。しかし一緒に参加している他所属の職員と、課題を共有し、アイデアを出して工夫し、その方法を共有する職員も出てきました。アカデミー終了後もグループのメンバーと話し込んでいたり、我々やオフィスミカサさんと話し込んで、お昼休みなのになかなか会議室から出ないとか笑。職員専用のSNSのLoGoチャット上でも、所属を超えて若手同士で意見が結構活発にやり取りしていました。

アカデミー中、職員様カードワークで議論中

アカデミー中、職員様が話し込まれている様子

熱心に取り組んでくださっている様子

・椋本課長
他の業務では、見られない光景です。実際にアカデミー中にも「文書管理以外のもっと大きな改善の話もこういう形でしていきたい」という声もありましたね。そういうことが叶えられる一歩の場だとイメージを持ってくれたこと、これも大きな収穫でした。アカデミー参加者には「何かを変えていこう」という期待の気持ちを感じましたね。

・井上補佐
ただの受講型の研修ではなかったのが、この取り組みの大きな価値でした。この枠の中で、文書管理以外の改善も続けていきたい、風通しの良い職場環境の下地を固めて、広げていきたいと思えたし、次へつながっていくものが出てきたと思っています。

文書整理からスタートすることは、具体的な業務改善であり、次の段階として維持管理へつなげることで、ノウハウを積み重ねてゆき、この雰囲気を土台に業務改善へ進めてゆくというのは、非常によいステップだと思いました。

アカデミー修了証書をもって記念撮影

インタビュー 山添村様インタビューその② 「業務改善からの文書管理」

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